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広報・PRの視点から見た深センの"ココ"がヤバい〜なぜ36歳で廃人になると言われる深センの企業に優秀な若手が集まるのか、その理由を考えてみた〜

志保@深セン
  • 2018/05/23 17:55
  • 中国
  • インターン後

 

1970年からの40年間で深センで使ったコンクリートが、
全人類がいままで使ったコンクリートの量に匹敵するという、
超急成長都市・深センに行ってきました!

 

秋葉原の30倍の広さの電子街や、
半年間で70%のタクシーを電気自動車に入れ替えた地域にも代表されるように
IT投資に力を入れており、2015年には2018年までに人工知能分野で1000億元(約1兆7000億円)レベルの市場を創出しようと、具体的な数字を掲げた中国。

 

中でもなぜ深センに優秀な若手が集まるのか、その理由をAIベンチャーに勤める広報担当者の目線でまとめてみました!

長文ですが、写真もふんだんに挿入しておりますので、流し読みだけでも嬉しいです。

 

 

▼そもそもなぜ深センに行くことになったのか

実は完璧にプライベートで、モノづくりのシリコンバレーと呼ばれている深センの街並みを、感性の赴くままに楽しみたい!という気持ちで、Facebookで見かけた面白そうなツアーに申し込んだ、、、つもりでした。

しかし、運営会社のタイガーモブ株式会社(以下、タイモブ)さんから送られてきた旅程表を見てビックリ。

 

え、結構ガチな感じですか....
IoTスーパー?
工場見学?
展示会視察.....?

 

でも、超楽しそうじゃないですか!!!!!

 

こんな最高に面白そうな合宿を企画したのは、タイモブ代表の菊地さん。

 

△イエローのトップスを着ている女性が菊地さん。社名にちなんだ「タイガー」のポーズ

 

タイモブさんは主に大学生向けに海外インターンシップの企画、運営をしている事業をしている会社で、ルワンダやインドへ今まで600人以上を送り出した実績があるそう。


世界中を飛び回っているファウンダーの菊地さんが4月に深センに訪れ、「深センのヤバさを伝えねば!!!」と一念発起し、なんとその後、1ヶ月間で作り上げたプログラムが、私が参加した深セン未来合宿でした。

 

 

△菊地さんのFacebook投稿を読んで行きたい!と即決したため、HPをあまり見てませんでしたがとても素敵なデザイン

 

・・・しかし、完全に旅行気分だった自分には、やや重いかも笑。。という気持ちも隠せないままに、5/2の初日を迎えたのでした。

 

 

▼結論 深センのヤバさは、張りぼてから本物になるまでの圧倒的スピードと、デザイン&PRの力

 

このブログを読んでくださっている方は、おそらく広報、深セン、ヤバさ、若手を惹きつける理由のどれかにピンとこられた方だと思うので、先に結論をお伝えします。

 

優秀な若手を魅了する深センのヤバさは、
①張りぼてから本物になるまでの圧倒的スピード
そして何より、
②デザイン&PRの力
だと思いました。
※あくまで4日間だけ滞在した限りで感じた、個人的な見解です

 

一つずつ詳しくお伝えしていきます!

 

▼①張りぼてから本物になるまでの圧倒的スピード

 

初日の移動時間中に訪問予定の企業のHPや、お話いただく方の著書に目を通していたのですが、一番印象に残ったのが、JENESIS という会社を経営している藤岡さんの書籍の一節

 

「ここは中国 。日本ならば詐欺師のようなメーカーはそんなに多くはないが 、深圳ではいい加減なメーカーばかりだ 。そういう会社に限ってパンフレットやウェブサイトだけはこぎれいに作っているので 、見分けることは難しい 。」

△『「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム (NextPublishing)』(藤岡 淳一 著)より
※P. 921〜922
※無料サンプルもあります: http://a.co/7KX4FOE

 

つまり、とてもじゃないけれど商品とは呼び難いガラクタを売っているところがとても多く、そういうところに限ってパンフレットなど表層的な部分はキチンとしている、とのこと。。。

 

そんなハリボテ、という言葉がぴったりだったのが、藤岡さんが深センに工場を建てた2013年あたり、とのこと。


こんな前情報もあったので、中国はコピー文化で、外側だけはそれっぽいものを作り、実は全く動かないようなものばかりなのだろうな、というイメージを抱いていました。

 

△実際に深センで販売されていた製品たちの一部

 

しかし今回の深セン未来合宿で、5/4(金)に藤岡さんご本人からお話を伺う機会があり、そのイメージは完璧な間違いであることを知りました。

 

藤岡さん曰く、

「深センは圧倒的なスピードで成長を遂げているので、昔は他国や他社の製品をコピーして作っていた深センが、最近では世界中の国々がコピーすべきような素晴らしい製品が作られている。」

 

その背景には、「3ヶ月くらいで試作品できて、しかも小ロット(1,000個)から発注できるような、洗練されたサプライチェーンがある。そのため500万円ほどでオリジナルの商品を作ることができる

 

△藤岡さんのスライドより抜粋。国内スクラッチ開発VS深圳エコシステムのコストと期間

 

多産多死だからこそ、ノウハウが溜まりまくっている。
更に、アラブのような富裕国の大企業向けのハイテク製品から、中国国内のスタートアップ向けの安価な製品まで作ってくれるので、今世の中で最も必要とされている製品のありとあらゆる情報の宝庫になっている」
とのこと。

 

もちろん安いものを作ろうと思えばどこまででも安くするノウハウもあるけれど、逆に世界中でどこの企業も作っていないような最先端のハイテク製品の研究開発も活発である、という事実は、私にとって新しい情報でした。

 

確かに2013年時点では、深センのモノづくりは大半はハリボテで、「実際に購入してみたら動かない」なんて製品も溢れていたかもしれません。

 

しかし2018年現在は中身がしっかり追いついて、今や圧倒的なノウハウと情報をベースに、高い技術力を以って世界中から発注が絶えない超モノづくり都市になった深セン。

 

△藤岡さんの資料から抜粋。世界中からの発注をさばくためのローカルチェーンの解説。

この、張りぼてから本物になるまでの圧倒的スピードをお伝えするために、
具体的な成功企業のストーリーをお伝えした方がよりしっくりくると思うので、一つだけご紹介させてください。

 

 

▼代表はまだ30代。DJI社の成功ストーリー

 

世界のドローンの半数を作っており、今や社員数5,000人を誇る大企業であるDJIは、
元々は代表である汪滔(フランク・ワン)氏が大学生の頃から秋葉原のような電気街で試作品を作るところからスタートした2005年創業のベンチャー企業。

 

深センでは有名な汪滔氏の格言があり、「72時間、頭がちぎれるほど仲間と議論をし続ければ、必ずイノベーションは生まれる」というもの。

 

DJIは初めに出したプロダクトからバカ売れしたわけではなく、3つの製品を世の中に出してある程度の資金を作った後、まずはかっこいいプロモーションビデオを製作し、そのビデオを通じて販売したファントム4というドローンが大ヒットしたことが急成長の起爆剤になったそう。

 

△手前の白いドローンが「ファントム4」

今や世界中から発注がくるグローバル大企業へ成長を遂げたDJIも、当初は電気街で掻き集めたパーツを元に製品を作るところからスタートしたと思うと驚異的です。

 

そして面白かったのが、我々が訪れたのはDJIの旗艦店だったのですが、実はここ、「Shenzhen tourist information center」と記載があるように、深センの観光情報センターなのだそう。

 

その場所を丸々DJIの商品を展示するスペースにしていることからも、DJIが最強のモノづくり都市・深センを象徴する企業であり、深セン市も観光客にもっとも伝えたい場所としてDJIというスタートアップを選んでいるという関係が素晴らしいと思いました。

 

△DJI旗艦店。周りは映画館やショッピングモールがあり、土曜日だったので家族づれがたくさん。

その他、現地人材紹介会社 Find Asiaにお勤めで、今回の合宿のコーディネーターでいらっしゃる加藤さんや、今回訪問した企業の方々よりお伺いした、「深センは急成長した都市である」という言葉を裏付けるファクトをお伺いしましたので、記載しておきます。

 

・あのテンセントは、36歳で廃人になると言われるほど、ストレスフルなハードワークをしているそう
・入社一年以内に転職する新卒社員が約40%
・JENESIS社の受注量は毎年1.5倍ずつ増えている
・1,000人入るシェアオフィスが300拠点ほどある

 

△メッセンジャーアプリ「QQ」提供から急成長したテンセント。不夜城だそう・・・

深センを象徴するようなテンセントやDJIという企業が、若い理工系の大学生を無条件に集めてくれる魅力を持っており、そこで勤めるほぼ大半の若手社員が、1億円ほどする深センの家を家族のために買うことを目的に、寝食を惜しまずに働く、という流れが出来上がっているそうでした。

 

一つ目のヤバさである"張りぼてから本物になるまでの圧倒的スピード"、そしてそれを支える市のバックアップやサプライチェーン等が出来上がった歴史的背景、みなさんにも伝わりましたでしょうか。

 

▼もう一つのヤバさ、それはズバリ、②デザインとPRの力だ!

 

ズバリ、と書いてみましたが、広報のみなさんお待たせしました!ここからがPRの話です。
まずはこちらの看板をご覧ください。

 

△華強北という世界最大の電気街。秋葉原の約30倍の規模のところです!

この赤い看板には、世界のモノづくりの街 深セン、ということが書かれており、製作者は深セン市だそう。
最初は少しアンダーグラウンド的な存在として見なされていた電気街も、続々とモノづくりの聖地という位置付けであることを嗅ぎつけたビジネスマンが訪れるので、これはチャンス!と思った深セン市が、こうしたフォトジェニックな看板を作った、と。


なんという卒の無さ。

 

また、アリババが中国で初めて作ったIoTスーパーは、商品についているバーコードを読み取れば、自動的に店舗から自宅へ配送してくれる、というものなのですが、オープン1週間前からポップアップショップを出し、オープン後にはレジ前には常に潤沢な説明スタッフを配置。


店舗の内装も、荷物を自動配送するためのレールが天井に張り巡らせており、居るだけでワクワクするような空間作り

 

△IoTスーパー内の写真。スタッフが他のスタッフにタッチパネル式について教えるシーンも。

認知と普及の戦略を、商品企画と広報、マーケティング担当者が一丸となって練りに練ったのだろうな、ということが伝わってくる素晴らしい場所でした。

 

△実際に購入したものを自宅まで運ぶ方達。高齢者もアプリでの買い物を使いこなしているそう。

 

これらはほんの一部の例に過ぎませんが、その一部だけをとってみても、PRに理解のある国や大企業のトップと、それを形にしまくる百戦錬磨の商品企画、そして敏腕な広報、マーケティング責任者の存在によって、モノづくり大国深センのブランドが確立されていってきたのだと感じました。

 

ではなぜ深センでそのような人材が集まり、ブランドデザイン・PRを重要視する文化が浸透、確立していったのか?

深センならではの理由をお伝えしていきます。

 

▼電気街にある商品の9割はゴミだと思っていい

 

これは深センでIdea Portというモノづくりとビジネスコンサル会社を経営している鈴木さんという方がおっしゃっていたことですが、実際に電気街に並んでいる部品を活用してハードウェアを作ろうとする際は、極論、9割はゴミだと思って、交渉や念入りな商品確認をした方がいい、とのこと。

 

だからこそ、今深センでは、きちんとした商品を見極める力が他国よりも必要で、メーカーやサービス提供事業者も、選んでもらうためにカッコいいデザインのロゴ、パッケージ、パンフレットを作ることの重要度が上がっているそう。

 

△同じ製品でも女性用、男性用で別々のパンフレットを用意している製品も。

激しい競争があるからこそ、ユーザーの選択コストを下げるために、つまりは生き残るために、デザインとPRの重要性を痛いほど理解してきた企業が多かったのでしょう。

 

また、この点についてはJENESISの藤岡さんも触れていて、「そうした激しい競争の歴史を歩んできたため、2010年代に深センにあった下請け部品メーカーの多くは潰れてしまった

 

しかし、特徴のある部品メーカーだけが生き残ったことで、ボトムアップ型のエコシステムが生まれた。そのエコシステムの先頭に立っているのはIDHという設計会社だ。


IDHは、生き残ったエッジの効いた部品メーカーを束ねて、各メーカーが設計部門を持たなくても部品の生成ができるように、全てのメーカーの商品企画の部分を全て請け負ったそう。


従来、商品企画のための研究開発には人もお金も時間も膨大に必要だが、それを全て請け負ったのが、デザインハウスであるIDHであり、今も深センで大きな影響力を持つ企業である。」

とおっしゃっていました。

 

△JENESIS 藤岡さんによる、1990年代、2000年代、2010年代の深センの推移をまとめたスライド。

どんな商品を作り、どうやって売っていくのか。
製品のデザイン、設計をしていたIDHが、深センの中堅企業の企画、マーケティング、広報までを担うようになり、自然とデザインやPRの観点が含まれた商品が生まれるようになったのでしょう。

 

まとめると、、、
・初めはアンダーグランドだった電気街にも、訪問者数が増えたら市をあげてPRをし始めた
・あらゆる商品に、企画〜マーケティング〜広報の一体感を感じる
・その背景には、1990年くらいからの熾烈な競争を生き残っが企業は、デザイン、PRの力(IDHなど)に救われて、ボトムアップ型のエコシステムが生まれたことがある

 

このように、生き残りをかけた戦いを勝ち抜いてきた企業が大事にしていたものが、デザイン・PRであったのだと感じ、ヤバさの一つとして挙げさせていただきました。

 

 

▼まとめ

今回私が訪れた場所は深センのほんの一部ですが、それでもなぜこの都市に優秀な若手エンジニアが集まってくるのかを肌で感じることができたと思います。


また、格安な汎用品を大量に売りさばくだけではなく、富裕国向けに最新のハイテク製品の受注生産もガンガン行われており、中国がコピーする国からコピーされる国になっているという事実も知ることができました。その裏には、洗練された生き残りをかけた戦いの中でデザインとPRの力を磨いてきた広報、マーケ、デザイナーの存在があることも。

 

こうした事実を受け、製造業向けのIoT、AIベンチャーの広報としてできることは、やはりまずはエンジニアがワクワクできるような環境を用意できるよう、とにかく発信のスキルを向上させること。

 

そして、"モノづくりといえば深セン市"、と同じように、"起業といえば福岡市"、と言われるまでに、不断の努力を続けてきた福岡市にあるベンチャー企業として、世界中から優秀な人材を惹きつける情報発信をしていきたいと思っています。

 

▼長くなりましたが・・・

ここでは書ききれませんでしたが、IoT×AIベンチャーで働く自分にとって特に刺激的だったことが3つあり、もしこのブログがある程度のアクセス数に達したら、そこにフォーカスしたブログも書いてみたいと思います。

 

・JENESIS 藤岡さんからお伺いした深センのお話(紹介していないスライドも沢山・・・)
・知育ロボットを通じて教育事業を提供している
Dobot社のお話
・83歳のIBM出身者が起業したハードウェアスタートアップ、
ROYOLEが開発している最新プロダクト

 

△ROYOLEのパンフレットとSmart Transportationのデモ機

▼最後に


また、私自身、初めて深センに興味が湧いたのが、高須さんというチームラボで働かれている方が運営しているニコ技深圳観察会に2017年春に参加され、その内容をリクルートさんのブログで発信していた平野さんの記事を読んだことがきっかけでした。


同じように、このブログを読んで深センに行ってみたい!と思う方がいらして、日本からももっと世界で名を轟かせるような企業とエコシステムをもっと作ろう!と思われる方が一人でも増えたら、(そしてSKYDISCにも興味を持ってくださったらより・・・!)とても嬉しく思います(*^^*)

 

タイモブさんも、おそらく深セン未来合宿 第2弾、第3弾を企画されると思いますので、ぜひぜひチェックしてみてください!

 

一緒に合宿を共にした15人の仲間と、タイモブの菊地さん、上原さん、Find Asia加藤さんに感謝!

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

志保@深セン

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