TOP/海外インターン体験談(タイモブログ)を読む/ルワンダの体験談:【レポート】ルワンダコーヒーの生産現場より〜世界最高品質への挑戦!〜
こんにちは。
STARTUP AFRICA in RWANDAに有給休暇で参加したレイです。
実家が喫茶店で小さい頃からコーヒーに親しみ、最近はUCCアカデミーに通ってスペシャリティコーヒーについて学んでみたり、とコーヒーが大好き。
インターン参加を決めた最大の理由もやはりコーヒー。だってルワンダのコーヒービジネスの現場を見られる機会はそう滅多にないですから。
、、、と、そんなわけでこの記事の執筆を担当することになりました。
ルワンダコーヒーの生産現場の取り組みをレポートしたいと思います!
★はじめに
今回訪問したのは、1996年創業のルワンダ最大のシェアを持つ民間のコーヒー加工業者兼輸出業者のRWACOF EXPOPRTS LTD.(以下、ルワコフ社)。同社の提携農園と2つの加工設備(ウォッシングステーションと精製工場)を見学させていただきました。
★家族的なルワンダのコーヒー農園
訪れた農園は首都キガリから南部へ30kmほど、思ったより街から近いものの、途中からバスに乗っていて恐怖感を感じるほどの悪道を山奥に進んだ場所にありました。
「ここは農園へ向かう道の中では良い方だよ」というスタッフのコメントに驚きながら、窓の外に目をやると赤い実をつけたコーヒーの木がチラホラと見えるようになり、ワクワクしてきた頃に到着。
農園に着いて最初に感じたのは、「ちょっとイメージと違うな」という印象。
最大のシェアを持つ会社の農園、というより、アットホームな関東地方の果樹園という雰囲気でした。
それもそのはず、これは個人が経営する農園でした。それをルワコフ社が管理支援しているという形。
「千の丘の国」と呼ばれるルワンダでは、農地が山間の狭い土地や傾斜地に限られるため、大規模な農園経営に向かず、コーヒー栽培も零細農家に支えられています。
この契約農園は約0.3haの広さに300本程のコーヒーの木が栽培されているという規模。この辺りにはこんな農園が3つ並んでいるのだとか。
ルワンダで栽培されているコーヒーの種類は主にアラビカ・ブルボン種。一部ジャクソンという種類も作られています。
目の前に広がるコーヒー畑は、樹齢3年程の若い木ですが、よく見ると根元が古い木の幹の脇から出ています。剪定の跡です。
もともと古木の農園だったのでしょう、コーヒーの木は若すぎても古すぎても実付きが悪く、生産性が良くないため、時に再生措置を図る必要があるのです。
コーヒー栽培には気候や土壌の他、枝の剪定、木の保護(地面を覆ったり、シェードツリーを植えたり)、農薬や肥料の種類とやり方など、品質を左右する様々な技術要因があります。
「本当はもう少し幹の下の方から脇枝がでないとダメなんです、、、」
「他より背が高いこの辺りの25本は2回有機肥料を追肥したもの。収穫量も3倍になりました」
ここでは農園主の協力のもと、こんな風に栽培条件を試験的に変えて、木の生育や実の付き方がどのように変化するか、生産性と品質の向上を図る取り組みが行われているのでした。
コーヒーの苗や肥料などは政府機関のNAEB※からも提供されているとのことです。(※National Agricultural Export Development Board 農業輸出局= コーヒーの栽培・加工・販売までを所轄する機関)
これは帰国後に調べてわかったことですが、これら行政からの物資提供や技術指導は、コーヒー産業を農業の中核に据える国家政策に基づくもの。病害に強く品質の良いチェリーを沢山収穫できるコーヒーの木の栽培をめざして、官民連携で取り組んでいる姿といえそうです。
ちなみにコーヒーチェリーの収穫時期は3月~6月頃。5〜6人程度の人を集めて、赤い実を選んで収穫します。もちろん手摘みです。
季節外れの赤い実について聞くと、これらは頃合いを見計らって収穫され、セミウォッシュのコーヒーになるとか。赤道直下のコーヒーは年に2~3回実をつけるため、また個体差もあり、収獲時期でなくとも年間通して実が付いてる木が見られるんだそうです。
(上段: 実になる前の花の跡、下段:コーヒーの実)
★ウォッシングステーション(一次加工場)
続いて訪れたのは農園からほど近い場所にあるルワコフ社のNYAMIYAGAウォッシングステーション。
ルワコフ社は2006年に最初のウォッシングステーションを設立して以来、現在は17のウォッシングステーションを所有しています。
これらは一体どんな施設かというと、、、まずはコーヒー豆ができるまでを簡単に説明したいと思います!
農園で収穫される赤い実(コーヒーチェリー)は皮をむくと、中からコーヒー豆の姿をした乳白色の種子が二つ向かい合って現れます。これが加工前のコーヒー豆です。
乾燥させて全ての皮(※)をむくと乳白~緑色の生豆になり、それを焙煎してはじめて、普段私たちが目にする茶色い香ばしいコーヒー豆(焙煎豆)になります。
(※コーヒーには、チェリーの皮の他、種子に2種類の皮があります。)
コーヒーの生豆の精製工程の前半には、皮をむいた果肉の付いた種子を「洗う方法」と「洗わない(または簡易に洗う)方法」の2種類があります。
ルワンダでは両方の方法で生産されており、ウォッシングステーションとは前者の工程を行う場所、文字通りコーヒーの実を洗って乾かすところで、大がかりな設備と大量の水が必要です。(私はこれまでウォッシングステーションは大規模農園にしかないものと思い込んでいました。)
ウォッシングステーションでの工程は1. 実の選別、2.赤い皮(パルプ)と果肉を剥がす、3.種子を洗う、4.乾燥させる、と大別できます。チェリーの皮と果肉を堆肥にする設備もありました。
果肉と種子の2番目の皮(果皮=パーチメント)の間の「ヌルヌル」が残るとコーヒーの味に影響するのですが、これが手強くてなかなか取れないため、水槽で発酵させたり水路を通したり、数日かけ豆を選別しながら洗っていく訳です。その後、広大な乾燥台で乾かします。
一方、後者の工程は各農家によって独自に行われているそうです。
一般にウォッシングステーションで精製された豆は「(フル)ウォッシュ」、そうでない後者の工程で精製された豆は「セミウォッシュ (一般的にはナチュラル)」と呼ばれています。
収穫時期になるとウォッシングステーションには4km~10km圏の近隣の契約農家からコーヒーチェリーが持ち込まれ(回収しにいくケースも)それをルワコフ社が買い取って加工するという仕組みです。
買い取り価格は粒の大きさと完熟度合で異なり、政府が最低価格を決めて保護している一方で、近年は品質の向上に伴い買い取り価格も上がってきているそうです。
ウォッシングステーションが稼働するのは収穫期の3月~6月のみで、加工の様子を実際に目にする事が出来なかったのは残念でしたが、山の中の大規模設備だけでも見ごたえは十分でした。
またルワコフ社は顧客のリクエストに応じて様々な認証(レインフォレスト・アライアンス、フェアトレード等)にも対応しています。
管理事務所には認証監査にかかる様々な資料が掲示され、契約農家や従業員の指導、ルールや手順等、先進国的な手法できちんと管理されているのが伺えました。
認証コーヒーとそれ以外は倉庫が異なり、グレード毎に置き場が区別され、商品管理もきちんとされています。
ちなみに「あの」スターバックスさんもルワコフ社の認証コーヒーの顧客とのこと。
また余談ですが、ルワンダのウォッシングステーションは民間だけでなく協同組合のものも多く、その数は急激に増加しています。
2002年にはルワンダ全土でたった2ヶ所だったものが2012年時点で214ヶ所!行政の2017年までの目標数はなんと、349ヶ所だそうです…
(ウォッシングステーション数の推移 :ICG 2015 Coffee Washing Station in Rwanda(Project Memo)より)
★精製工場(二次加工場)
最後に訪れたのは、キガリ市内の精製工場。こちらの施設には、一次加工後の乾燥した豆が運び込まれ、輸出されるまでの工程が行われています。
作業工程は 1.パーチメント(果皮)の脱穀 、2.石やごみを取り除く、3.機械による選別(大きさ、重さ、悪い豆) 4. マニュアル選別(色)5.袋詰め→保管、という順に進みます。
工場内の大規模な機械は、さすが最大のシェアを誇る会社の貫録。精製機械は多くがドイツ製で、中には日本製もありました。
脱穀後、悪い豆を取り除いたり、大きさを仕分けたり、様々な選別作業が続くのですが、印象的だったのは最後のマニュアル選別の工程でした。
敷地内には約200人のカラフルなアフリカ布をまとった女性たちが座って、機械ではできない色の仕分け(カラーピッキング)を行っていました。
本格的な機械導入以前は1000人もの人数で豆の選別を行なっていたそうですが、現在は特定の顧客の要請に基づいてのみ行われているのだとか。
この要請の背景には顧客企業の「品質の追及」というより「雇用を守るため」という配慮があるそうです。
コーヒー産業は農業国ルワンダの中核産業であり外貨獲得のエース。
約50万世帯が栽培に関わっているというコーヒー産業の裾野の広さと重要さを垣間見ました。
★コーヒーの試飲
一連の見学の最後の締めは試飲(カッピング)。
工場内に品質の研究室があり、最高級の装置で焙煎されたコーヒーが良い香りを放って私たちを待っていてくれました。
試飲対象は、異なる3箇所のウォッシングステーションから算出される豆、そしてウォッシュ豆とセミウォッシュ豆の5種類。それぞれを品評会方式でティスティング。
3つのウォッシングステーション別の味の優劣は分らなかったけれど、明らかにセミウォッシュよりウォッシュのコーヒーが格段に美味しかったのが衝撃でした。
業界ではどちらもそれぞれの良さがあり優劣は一概には言えない、とされているのですが、ルワンダではウォッシュコーヒーのほうが高品質とされ、実際、高価格で取引されています。
これは単純に精製方法だけではなく、良い品質の豆が選ばれてウォッシングステーションで処理されているからではないのかな、と個人的には思っているのですが…それはさておき。
現在はルワコフ社でもウォッシュコーヒーの割合はまだ半分以下とのことでしたが、ウォッシングステーションの増加とともに今後もウォッシュコーヒーの割合は増加していくのでしょう。
(左:セミウォッシュ豆、右:ウォッシュ豆)
最後に「今後どのようにコーヒーをプロモーションしていきますか?」と質問すると、こんな答えが返ってきました。
「カップ・オブ・エクセレンス!」
これは世界最高峰のスペシャリティコーヒー品評会での高評価を狙うということ。
確かに入賞は効果的な宣伝になり高値の取引も期待できます。
調べると2008年にアフリカ初の開催国となって以来、ルワンダの生産者は毎年ハイスコアでの入賞実績があり、ルワコフ社のウォッシングステーションも多数の入賞歴がありました。
野望を抱く彼らのコーヒーの未来に、大いに期待したいと思います!
★最後に
ところで、ルワンダのコーヒーを飲んだことがありますか?
日本にも輸入されていますが、そう頻繁にお目にかかるものではありません。圧倒的に生産量が少ないからです。
ルワンダのコーヒー豆生産量は約1万6千トン(2014年FAO統計、世界32位)。同じ年の統計で、世界最大の生産量を誇るブラジルは約280万トン。アフリカ勢トップのエチオピアは約42万トン(5位)。
そしてウガンダ約22万トン(10位)、ケニア・タンザニア約5万トン(20位、21位)と続きますが、ルワンダは他のアフリカ勢にもまだ及ばず、生産量ではなかなか貴重なコーヒーといえます。
一方日本への輸入量は、同じ2014年の実績で324トン(財務省「通関統計」より)。世界3位のコーヒー消費大国で、例年約40万トン以上のコーヒーを世界中から輸入している日本。その中でルワンダコーヒーが占める割合は、輸入量では全体の1%にも達しません。
しかしルワンダから日本に輸入されているのは、スペシャルティグレードの希少な高品質豆。実にカップ・オブ・エクセレンス受賞豆の約半分が、日本の会社によって高値で買い付けられているそうです。
ルワンダコーヒーはバランスのとれた柔らか味のある柑橘系の酸味と甘み、華やかな香り、クリーミーなコクが特徴と言われています。
もし専門店等でお目にかかることがあれば、ルワンダの挑戦に思いを馳せながら、貴重なコーヒーを是非味わってみてください。
(ルワンダの高級コーヒーチェーン”BOURBON COFFEE”にて)
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