今回のタイガーモブの導入事例インタビューは、2020年度末にタイガーモブのアート・コミュニケーションプログラムを導入いただいた、角川ドワンゴ学園N高等学校のキャリア開発部 平田さん、福永さん、湯野川さんにお話を伺いました。
ネットの高校として有名なN高では、日本中、そして世界から、それぞれの生徒さんが自分のスタイルに合わせて授業を受けています。今回タイガーモブを導入いただいた留学課では、生徒さんが自分の意見を発信したり、議論をすることに慣れていない等の課題があったと言います。導入の背景やその後の生徒さんの様子など、お話を聞きました。
これから2回にわたって、導入事例を紹介させていただきます。
前編では、ネットの高校であれるN高の魅力や、留学課によるサポートについて、そしてタイモブのプログラム導入に至った背景についてご紹介します。
>>実際の導入の様子、プログラム後の生徒の変化については
「学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校様導入事例(後編)|アートを使ったコミュニケーションプログラムで多様性に気づき、発言する力がアップ」へ
■インタビュイー
平田まりさん、福永百合香さん、湯野川潤さん(以下敬称略)
角川ドワンゴ学園N高等学校
キャリア開発部
■インタビュアー
中村 寛大
タイガーモブ株式会社
COO(最高執行責任者)
―今日はよろしくお願いします。まずはじめに、N高等学校(以下、N高)についてお聞きしたいです。いろいろ話題となっている学校ですが、どんな学校で、どんな取り組みをしているのでしょうか?
福永:N高は、高校卒業に必要な単位取得のための授業やレポート提出をすべてオンラインで行なう通信制の高校です。プログラミングやライトノベルなどの課外授業や全国各地での職業体験、投資部や起業部などの課外プログラムがあり、社会で役立つスキルをプロの指導のもと身に付けられるのがN高の特徴です。開校から5年が経ち、今では生徒数が4月に開校したS高等学校と合わせて1万8000人強にのぼる日本最大級の高校になりました。
生徒の高校生活など、それぞれの部署がさまざまなかたちで生徒をサポートしているのですが、私たち留学課の所属するキャリア開発部では、生徒の将来の選択肢を広げるための取り組みを幅広く行っており、留学課では留学プログラムの企画運営や海外進学サポートなど特に海外に目を向けた活動をしています。
日本では、進学校や就職に特化している学校など、学校ごとに縦割りで強みが分かれているところがほとんどだと思いますが、進学就職に関わらず、すべての生徒たちの進路先を応援しているのがN高の特徴です。
―いわゆる大学進学を目指す生徒も就職を考える生徒もいれば、はたまた想像もしない選択をする生徒もいて、そのすべての進路を応援するのが特徴なんですね。
福永:そうですね。それぞれに学校のコンセプトがあり、学校の中には就職よりトップ校を目指そう、という考えもあるとは思うのですが、N高の大きな特徴としては全部を応援する、という点だと思います。
―もし分かればでいいのですが、なぜいろんな選択肢を応援しよう、というコンセプトになったのでしょうか。
福永:私の理解では、そもそもN高では多様な生徒を受け入れているからだと思います。もちろん生徒の将来に対して、ひとつの決まった正解はありませんよね。多様な生徒がいれば、多様な正解がある。単純にそれだけだと思います。
―なるほど。N高は、進路に限らず、新しいテクノロジーを取り入れたり、学校の在り方自体が新しいですよね。生徒の在り方そのもの、日本の高校生の生徒像を刷新して、新しい価値を創造しよう、という想いを感じます。
平田:N高は生徒の特性を伸ばせる場だと思っています。
そういう意味だと、あえて尖った方向に持っていく、ということでもなく、生徒が関心を持って実現したいことがあった時に、例えばキャリア開発部の中だと投資部や起業部だったり、それを実現するための選択肢がある状況を作っていくのが学園の方針です。
自分らしい学び方をして、自分らしい進路選択をしてほしいと思っています。
―生徒自身の「こうありたい」「こういう風にしたい」という意思や志が一番の軸になるということですね。
平田:そうだと思います。
もちろんすべての生徒がそこまで強い意志を持って何かやりたい、というわけでもないので、そういった生徒に対して職業体験やネット部活などいろいろな課外活動を通じて、視野を広げ、興味関心を引き出し、自分のやりたいことを最終的に見つけていってもらえるようにサポートをしています。
―機会提供というのが、ひとつの大きな役割になりそうですね。
平田:そうですね。多様な学び方や機会の提供がN高のポイントだと思っています。
―ありがとうございます。N高を見ていると、いつも「この切り口をやるか!すごいな」って思います笑 続いての質問ですが、留学課として掲げているビジョン・ミッションや目標、加えてもし追っている指標があれば教えてほしいです。
福永:留学課としてのミッションはいくつかありますが、ひとつ大きなものが「世界で活躍できる人材の育成をサポートする」というものです。
「世界で活躍できる人材」というのは、よく言われているように、語学力があって、多様なバックグラウンドの中でチャレンジできる、場所も言語も選ばずどこでも活躍できる人材だと思っています。生徒がそうした人材になるための機会提供ができるように活動しています。最終的には、人生のどこかのタイミングで、生徒たちが世界を見てみよう、留学をしてみたいと思ってくれたらいいなって思っています。
その中の指標のひとつとして、海外大学への進学数や高校在学中の海外留学の生徒数があると思いますが、おそらく私たちが知らない範囲で、例えば大学を出た後に海外の大学院に進学したり、大学卒業してワーキングホリデーに行ったりする人もいると思いますし、在学中や卒業直後だけでなく、彼らの人生のどこかで、世界を見てみようと思ってくれるようなきっかけづくりをしていきたいですね。
今の時代、世の中に情報はあふれていると思いますが、挑戦する機会を提供することで、実際に世界にでてみてほしい。世界という大きな枠組みの中で自分を見つめなおしたとき、今回行ったようなセミナーを通して、他者に対して自分の意見を言えるようになっていたり、N高での経験を通して、生徒が少しでも成長できているといいと思っています。
―ありがとうございます。大きなミッションとしては「世界で活躍できる人材のサポート」あるんですね。そのために、今具体的にされていることと言うと、どんなサポートをしているのでしょうか?
福永:まず大きな軸としては、「英語の教育」と「留学の情報と機会の提供」があります。
留学については、新型コロナウイルスも流行しているので、やみくもに情報を与えても、というところがあり、現在は海外大学の進学やオンラインを通しての留学に重きを置いています。
留学の情報提供の場としては、説明会や個別に留学相談を行っています。特にN高として力を入れているのは、生徒への情報提供として、留学課が主催で説明会を開催していることと、個別留学相談会として生徒一人ひとりに個別で相談に乗っていることです。生徒たちが少しでも海外に目を向けはじめたときに、現実化するためのお手伝いを、個々に向けてできているのかな、と思います。
―個別って結構大変ですよね。外部に委託せず、校内ですべてやっている学校はほとんどないのではないでしょうか。
福永:おそらく、珍しいと思います。学校によっては英語の先生がやっているところもあるようですね。
私たちも内部で対応することを大事にしています。N高生の特徴も把握していますし、担任の先生と生徒の情報も共有しています。まだ課題もありますが、個々の特性を見ながら対応できるように日々向き合っています。
海外大学を考えている生徒がいたら、ただ国や大学を提案するだけでなく、どうやったらその目標を達成できるだろう、というところから一緒に考えます。
職員は語学、高校留学、大学留学について基本的な知識があるので、具体的にどんな準備をするか、というところから相談に乗っています。
―パッケージを入れているわけではなくて、何のために留学するのか、というところから、ゼロからテイラーメイドで対応しているんですね。
福永:そうですね。私たちができることは「このエージェントさんに相談できるよ」「こういう風に調べてごらん?」という提案までにはなりますが。今は、高校留学や語学留学は、コロナの影響もあり難しく、一番現実的な大学進学に関してフォーカスしています。
ー個別対応は、N高ならではの魅力ですね。
福永:そうありたいと思っています。
ただ、生徒が最終的に、日本にいることを選んでもいいと思っているんです。そうだとしても、一旦選択肢の中に海外を含めて考えてみてほしい。そうすると一回深く考えるじゃないですか。なんで海外なんだろう? どの国がいいんだろう? そもそもどうして語学を学びたいんだろう? なんでその言語がいいんだろう? そういう話をする中で、生徒にとっては将来を考える機会になります。今は勇気がないから、コロナだから行かないとか、そういう結論になってもいい。でも将来的に「あの時留学の話をしたな」って思い出してくれればいいと思っています。
ーその感覚わかります。笑 将来ふと思い出される「あの人のあの発言!」になれればいいですね。
福永:10年後でも、「あの時の一言がアメリカに行くきっかけになりました」って生徒が現れたら嬉しいじゃないですか。留学って、あ、明日行こうかな、って、ショッピングセンターに買い物するような感覚で行くものではないので、何年か後にでもいいので、考えてくれるきっかけになれたら嬉しいです。
ー作りたい世界観やオプション、とても素晴らしいですね。
これだけすごい取り組みをされていますが、そんなN高にも課題や問題意識はありますか?
福永:いろんな視点がありますが、2つ挙げるとすると、生徒目線と、学園全体の視点から課題があります。
生徒目線だと、より主体性を持ってほしいという想いがあります。生徒に対する期待値もありますが、将来的に海外を考えたときに、臆病にならないで、もう少し積極的に勇気をもってほしいですね。生徒の成長とともに、期待値とともに、もっとできると思っています。よく「日本の高校生はおとなしい」みたいなことを言われますが、N高の生徒もこの傾向があると思います。
学園全体だと、生徒全体に留学に対する情報量が行き届かないのが課題です。そんなに難しく考えなくても行ってみればいいのに!と思うのですが、「どうせ行けないし」と消極的になってしまう生徒もいます。日本と海外の大学を比べたとき、海外の大学の方が劣っている、って考えてしまう人もいるのも事実。また、やっぱり多くの人が海外=アメリカと思っていたり、情報の偏りを感じます。いろんな情報がいきわたって、その中から選び取れるような環境づくりは、まだまだこれからの課題だと思っています。
あともうひとつ、どこの高校も英語力の伸ばし方には課題を持っていると思いますが、N高にも課題があります。
私たちはオンラインコーチングというオプションの学び方も用意しているので、いろんな生徒に利用してほしいのですが、そこでも情報が行き届いてないかもしれません。
ーなるほど。そんな問題意識を持ちながら、今回タイガーモブに改めて興味を持っていただいた理由って何ですか?
平田:生徒への課題意識として、「生徒が自分に自信がない」ということが大きいと思っています。海外に行きたいという気持ちがあっても、自分に自信がなくて発言できなかったり、質問ができなかったり自主的に動けなかったり。質問力や発信力や主体性は海外生活で必要な力です。そういう課題がある中で、どうしたら自己開示ができるようになるだろうか、と考えていたタイミングで、タイガーモブさんとのお話をいただいたので、できますか?とお聞きしてみました。
「想いはあるけどやっぱり怖い」とか「自分に自信がない」「どうしたらいいかわからない」といったような、臆病
だったり自信のない生徒に対しては、海外に出ていった時に自分で発言ができる、意見を言えるようにしてあげることが大事だと思っています。みんな意見がないわけではないと思うのですが、自分の意見を聞かれることに慣れていない、みんなの前で自分の意見を言うことに慣れていない、というところがあります。それを克服するファーストステップとして、自己開示をして、自分を表現するようなワークショップがほしいなと思っていました。
>>実際の導入の様子、プログラム後の生徒の変化については
「学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校様導入事例(後編)|アートを使ったコミュニケーションプログラムで多様性に気づき、発言する力がアップ」へ
<N高等学校 本校:沖縄県うるま市、校長:奥平博一/S高等学校 本校:茨城県つくば市、校長:吉村総一郎>
N高等学校、S高等学校はインターネットと通信制高校の制度を活用した “ネットの高校”で、現在の生徒数は両校合わせて19,732名(2021年5月時点)。
「IT×グローバル社会を生き抜く“総合力”を身につける多様なスキルと多様な体験」を掲げ、今のネット社会に合った新しい教育を実践しています。
授業やレポート提出をネットで行うことで自分のペースで学べる高校卒業資格のための必修授業の他に、
大学受験やプログラミング、小説、ゲーム、ファッション、料理、美容など多彩なネットでの課外授業や、
全国各地で行う職業体験により、社会で役立つスキルや経験も高校時代に身につけられるカリキュラムが特徴です。
ネットコース、通学コース、オンライン通学コース、通学プログラミングコースの4つのコースから選択できます。
また、学び方についても、日々の学習をVR学習と映像学習で行う「普通科プレミアム」と、映像学習のみで行う「普通科スタンダード」を選択できます。
<公式サイト>https://nnn.ed.jp/ <公式Twitter>https://twitter.com/nhigh_info
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記事についてのお問い合わせはこちら:info@tigermov.com
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