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ASEANの発展とそれに付随する課題について

廣瀬礼
  • 2019/02/19 00:00
  • ベトナム
  • 営業,企画・マーケティング,新規事業
  • インターン前

 みなさんはASEAN諸国についてどのような印象をお持ちでしょうか。個人的には、個性が強い国ばかりで、訪れる先々で多くの新しい刺激を受けることのできる地域であるという印象を持っています。一口にASEAN旅行と言っても、美しいシンガポールの夜景を見ながらマリーナベイサンズのプールで泳ぐことを目的とする旅行と、ミャンマーのバガン遺跡で神々しいパゴダ巡りをすることが目的の旅行とでは、全くもって得られる感情や印象は異なることでしょう。ASEANは宗教も人口規模も、政治体制も極めて多様性に富んだ共同体です。経済についても、国民総所得を総人口で割った、一人当たり国民総所得の値を比べてみると、同地域で最も高水準のシンガポールが51880ドルなのに対し、最も低水準のミャンマーは1190ドルとなっており、ASEAN加盟国のなかでも非常に大きな格差があることが分かります(二宮書店編集部 2019)ちなみに、日本の一人当たり国民総所得は37930ドルで、アメリカは56810ドル、ケニアは1380ドルです(二宮書店編集部 2019)

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              ↑ミャンマー・ネピドーのパゴダとその近郊の風景(2018年11月撮影)

 

ASEAN加盟国のなかで特に経済発展が遅れている国々の頭文字を組み合わせて、CLMV諸国という呼び方がされることがあります。カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの頭文字をとったものです。CLMV諸国は、内戦の終結や、民政移管、近年のタイプラスワンの風潮などが合わさって、現在急速な経済発展を遂げている最中にあります。CLMV諸国とタイや中国は、経済回廊の開通などによって近年連結性が高まっていることから、製品の生産工程が各国の状況に合わせてフラグメント化することにより、同地域の国際分業は今後さらに進んでいくものと推測されます。現状においても、例えばタイとの国境付近の町であるカンボジアのポイペトでは、国境から20kmまではタイの車両の進入が許可されており、製品の生産工程のうち労働集約的な部門を、労働力がタイに比べて廉価なカンボジアで行い、完成品をタイに輸出するという形で、すでに国際分業が実現しています(みずほ総合研究所 2018)。タイとカンボジアは、両国の国境付近のダンレック山地に位置するプレアビヒア寺院の領有権を巡って双方に死傷者が出るほどの武力衝突を経験した過去がありますが、2013年に再度下ったこの案件に対する国際司法裁判所の判決(1962年の判決と同じく、カンボジア領と認めるという内容)に加え、先述の国際分業の進展という変化も両国間の関係が良化している要因の一つであるとすれば、それはすばらしいことであると言えるでしょう。

 

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 ↑カンボジア・プノンペンにあるポルポト時代の収容所(2018年2月撮影)とベトナム・クチにあるベトナム戦争時につくられた落とし穴(2017年2月撮影)

 

石戸光氏が2017年に上梓された著書のなかで、先述のCLMV地域とその周辺を結ぶ経済回廊は、輸出企業には恩恵をもたらしたが、回廊沿いの人々にはその恩恵が行き届いていないという趣旨の指摘が取り上げられていました。同書によると、例えばタイの農家では担保がないために、正規の2~6倍の金利で融資を受けている現状があるといいます。また、タイに限らず、生産農家が市場の要件を認識していることは少なく、売買価格も輸出業者が決めるうえに、農家には組合がないか、あったとしても交渉力が非常に弱いという現状も紹介されていました(石戸 2017)。急速な経済発展を遂げている同地域には、経済発展に取り残されている方々も多くいらっしゃいます。都市部の富裕層と農村部の貧困層の格差の問題は非常に深刻です。周知の通り、タイのタクシン派と反タクシン派の対立も、こういった格差に起因するものです。発展の恩恵に預かれずにおられる方々を、いかに発展へと包摂していくかという難題が、経済発展と表裏一体のものとして、同地域においても発現しているといえるのです。

member_blog_5482_5c6bb9e3167bc.JPGmember_blog_5482_5c6bba3ade101.JPG       

        ↑カンボジアのプノンペンの様子とゴミ収集サービスが提供されていないコンポンチャム州の村(2018年2月撮影)

 

ご高覧ありがとうございました!

 

参考文献

二宮書店編集部、2019、「データブックオブ・ザ・ワールド 2019年版」、二宮書店。

みずほ総合研究所、2018、「ASEANを読み解く」、東洋経済新報社。

石戸光、2017、「ASEANの統合と開発」、作品社。


 

廣瀬礼

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