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細部こそオリジナリティ | ばんこく新聞岡坂泰寛様インタビュー

おりばー@Tiger Mov
  • 2016/10/13 00:00
  • タイ
  • 営業,企画・マーケティング,社長直下
  • インターン後

こんにちは!タイモブ小川です。

 

今回は、タイで唯一の日刊日本語新聞・ばんこく新聞の拠点長である岡坂泰寛様にインタビューしました。

 

現在ばんこく新聞では、「世界が学び舎―海外インターン奮闘記」という海外インターンコラムを掲載して頂いています。

 

その編集から掲載までを担当されている岡坂様に、ご自身の経歴からばんこく新聞・海外インターンコラムに込める想いをお聞きしています。

 

文章を書く上で一番大切なことも分かる内容になっています。

 

どうぞご一読ください。

 

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―まずは、岡坂様ご自身に関して質問します。なぜバンコクにいるのかも含めて岡坂様の経歴を教えてください。

 

 

北海道生まれで北海道教育大学に通っていました。教師になるつもりでしたが、大学3年生のときに「ピアノで生計を立てていこう」と決め、大学を自主退学しました。そして、車に電子ピアノを積んで北海道から南下しました。屋根がある商店街などでコンセントを借りて、電子ピアノを出して、演奏してお金をもらっていました。本州を抜けて九州へ、最後は沖縄にたどり着きました。しかし沖縄に着いたころには資金も無くなり、昼はピアノ教師のアルバイトをして、夜は普天間基地近くのバーでバーテンダーをしながらピアノを弾く仕事をしました。米軍基地の中で米兵の子どもにピアノを教えることもありました。

 

 

その頃から報道の世界を目指すようになりました。米軍基地の中で働いたり、沖縄の方々と話したりする中で、日米関係に関心を持ちました。音楽よりも報道の世界が面白そうだと感じました。

 

 

でも、大学を卒業しないと新聞社に入れない。そのことを退学前のゼミの担当教官に相談したら、再入学試験を受けさせてくれました。感謝してもしきれない恩を感じています。過去3年間の単位もいかしてくれ、卒論を書いて卒業しました。就職活動は大学に戻ってからすぐ始め、ばんこく新聞の系列会社であるじゃかるた新聞に就職し、働き始めました。

 

 

―ばんこく新聞の系列はジャカルタ以外にもあるのですか。

 

 

ジャカルタだけです。じゃかるた新聞が新しくタイでも作り始めた新聞が「ばんこく新聞」です。

 

 

実は私はもともと故郷の地元紙の北海道新聞を目指していたのですが、試験倍率も高くて新卒採用では無理だと思い、海外経験を積んだ上で中途試験を経て入社できないか、と思いつきました。そこで、新卒でも雇ってくれる海外の新聞社がないかと片っ端から電話をかけたんです。唯一、じゃかるた新聞が新卒を受け入れており、5年間働いて、そのあと北海道新聞を受けて、そこに入りました。

 

 

北海道新聞で警察担当として地方で働きました。その後、じゃかるた新聞の社長が「バンコクでも新聞を出すので挑戦してみないか」と声をかけてくださいました。では是非やらせてくださいということで、北海道新聞を辞めてバンコクへ。会社を起ち上げたのが去年の7月、新聞が創刊したのが2カ月後の9月です。

 

 

―ばんこく新聞を起ち上げたのが岡坂様ご自身ということで、どのような想いを持っていらっしゃるのか教えて頂きたいです。

 

 

海外に駐在する方の中には、その国とあまり接点を持たない方もいます。業務内容が会社の中ですべて完結したりですとか、日本語を話せるタイ人が社内にいてコミュニケーションに不自由しなかったりですとか。ただ、タイで日本人が良い環境の中で仕事をできる土台には、先人が築いた日タイ関係があります。当時は、タイ社会との関わりをスタートさせるために必要に迫られたという側面もなかったとは言えないとは思いますが、我々の世代もタイ社会に入り込んでいかなければ、将来の世代に良い日タイの信頼関係を引き継げないかもしれせん。そのためにも、タイを知るきっかけにばんこく新聞がなっていければ、と思っております。

 

 

もう1つあります。なぜWebではなく、新聞なのかということです。タイの日本人に営業に行くと、我々の会社の将来を考えて、お叱りの言葉を頂くことがあります。「この時代に紙メディアは成り立たないだろう」と。「印刷や配達にどれだけコストがかかっているのか」と。「新聞事業なんてやめたほうがいい」と。しかし、紙にこだわっているのには理由があります。Webはいわゆる「食べ放題」「ビュッフェ」のイメージです。自分が知りたい情報に特化して情報をたくさん得るには良いツールですが、あまり関心がない分野には進んで手が伸びないのが難点。その点、新聞は広い分野から重要な情報のみを紙面に「固定化」して載せています。料理長が栄養バランスを考えながらさまざまな食材を厳選し、毎朝、日替わりの「幕の内弁当」を作っている感覚です。大好きなハンバーグだけではなく、野菜もきちんと摂れる。読者の方には毎朝、栄養バランスを整えて仕事場に向かってほしい。そういった想いを持って、編集部は紙面を作っています。

 

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 写真:創刊期から一緒に立ち上げをしてくれているタイ人スタッフのネイさんと。

 

―素敵な想いを持っていらっしゃるんですね。そんなばんこく新聞ですが、どのような人が読んでいるのでしょうか。

 

 

 

日本人駐在員のどちらかというと役職が上の方々ですね。そのような方が一番多くて、その次がタイ赴任間もない方たち。社長が若い方に読むように指導している会社もあります。ホテルや日本食料理店、大使館ロビーに置いてあるばんこく新聞を読んで、購読を申し込み頂くケースも多々あります。

 

 

―話は変わりますが、ばんこく新聞をやっていてよかったと感じることは何ですか。

 

 

読者同士が新聞の情報を通じてつながることがありまして、そういう縁結びのような媒体作りに関わっていられることは非常に嬉しいですね。また、新聞をゼロから始めたこともあり、ファンになってくれる読者が増えていくのがとても嬉しいです。また、読者が人に勧めてくれて口コミで申し込みを頂くですとか、そういう広がりを感じることはすごく大きなやりがいです。

 

 

―ばんこく新聞が広がるのは口コミが大きな要因なのですか。

 

 

口コミが一番多いです。営業部が電話して「読んでみてください」と勧めるよりも、自分が信頼する知人や友人から勧められると信頼感が生まれる。そういった口コミの力のすごさを実感しています。最近は会社の代表電話や代表メールに購読申込が多くくるようになりました。人に紹介したくなる新聞、そういう目標を持って新聞制作を続けています。

 

 

―次は海外インターンコラムに関してお聞きします。なぜタイモブ生のコラムを掲載しようと思ってくださったのでしょうか。

 

 

読者に役に立つコンテンツを毎日探しています。我々の主な読者は日系企業の駐在員や個人事業主です。たまたま海外インターン生が増えている時代になっていることを知ったあとに、インターン生が何を考えて海外に出たのかを紙面で紹介することは、受け入れ側となっている日系企業の役に立つのではないか、と考えたのがきっかけです。

 

 

―海外インターンコラムを掲載して今までに反響はありましたか。

 

 

海外インターン生を受け入れたことがない会社の社長などから「そもそもそういう制度があるんだね」というコメントが、多く寄せられました。また「うちも受け入れたい」という声もあります。

 

 

―実際に掲載してみて率直に感じていることを教えてください。

 

 

海外インターン中に、日本では経験できないような類の逆境に立ち向かう機会があったり、イスラム教やその国独特の文化を肌で感じたり、日本から海外に飛び出した大学生の体験記は、とても読み応えがありました。例えば、ブルネイでインターンをした帝塚山大の中野希咲さんは、現地の旅行代理店で働きながら「日本とイスラム」というアングルを持って仕事をこなしていましたし、青山学院大の合田美緒さんはインドネシアの証券会社で、その会社で初めての日本人営業担当として、新規の販路開拓に努めていました。また、現地のスタッフの方や友人との交流から、その国独特な考え方や流行などを敏感に感じ取っているようでした。

 

 

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写真:世界が学び舎第6回に登場した合田さんの記事。

 

一方、日本でインターンしたときと同じように、社会人として働くために越えなければいけないハードルを越えようと、みなさん努力されている印象でした。

 

―岡坂様ご自身はバンコクで働いて日本との違いは感じますか。

 

 

一言で言えば、人と文化だと思います。相手の国の文化を理解して、日本の良いところを混ぜて、その国で持続可能な収益モデルを作る。それを作り出していく必要があることが、日本で働くことと違うところだと思います。

 

 

―ばんこく新聞にはタイの方はいらっしゃいますか。

 

 

はい。配達員の方が10名くらい。デザイナーの方が1名、会計の方が1名います。

 

 

―海外インターンコラムの質問に戻ります。タイガーモブのインターン生の印象はどうですか。良い点と改善点を教えてください。

 

 

口語的な表現でコラムを書かれている方が多いようです。話し言葉での会話が多いFacebookやTwitterをよく利用している影響もあるのかもしれない、と感じました。内容の修正点などについてやり取りなどをさせて頂く中で、文語的な表現にも親しんでもらえればと思います。良い点は、自分自身と異なるものに目を向けようというアングルを既にみなさんが持っていることかなと思います。また、行動力も瞬発力もある方がインターン生には多く、文章からもその熱気が伝わってきます。

 

 

―ありがとうございます。次の質問は私自身も気になっていることなのですが、文章を書く上で一番大切なことは何ですか。

 

 

中身です。中身は何かというと、detail、細部です。自分の経験をどれだけ細かく書けるか。それには、どれだけ自分が細部を見てきたか、ということも関わってきます。細部が書いてある文章は面白く、細部を追記するだけで文章は説得力を持ちます。

 

 

また「思い・想い」というのは、文字にすると、似て読めたりします。「社会に貢献したい」とか、「世界で活躍したい」とか、「困っている人を助けたい」とか、「自分にしかできないことをしたい」とか。これらはある種、人間が持っている根本的な感情の一つとも言えるかもしれません。ですから「思い・想い」を書くだけでは、その人のオリジナリティーは生まれにくい。説得力にも欠ける。その「思い・想い」に至るまでの体験を、詳細に書いて書いて書いて書く、と。すると、オリジナリティーと説得力が生まれるかと思います

 

 

感情表現に関する書き方も同じかな、と。あえて言葉にしない方が良かったりします。テレビのドキュメンタリーに置き換えますと、親子で泣いている場面で撮影者が「すごく悲しそうです」とは言わない。その映像に説得力があれば、観る人にはおのずと悲しさが伝わります。文章も同じです。「悲しい」と書かなくても、細部が書かれていれば悲しさはおのずと伝わります。

 

 

―岡坂様ご自身が文章を書く際に苦労したことはありますか。

 

 

文章を書くときに苦労するということは、取材がしっかりできていないということ、と私も先輩記者に教わりました。書くときに悩むということは、ちゃんと見ていない、ちゃんと考えていないということの裏返しだと、今は思っています。

 

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写真:国王の回復を祈る国民について書いた記事 

 

―文章を書くには、感性や人間性も大切だということですね。それでは最後になりますが、タイガーモブのインターン生へメッセージをお願いします。

 

 

海外は、日本での日常生活では接する機会がない人と出会いやすい環境です。現地のその国の方々はもちろんですが、海外には日本全国47都道府県からさまざまな職業・役職の日本人も集まってきています。そんな人たちと自分から積極的につながっていく。それは海外に滞在している時間を有意義に過ごす、一つの方法かと思います。

 

 

―ありがとうございました!

 

 

【編集後記】

 

自主退学をしてピアノで食っていこうと思ったという、経歴から私の関心を鷲掴みにした岡坂様。しっかりとお話ししたのは初めてなのですが、日本のビジネスマンや学生、ひいては将来の世代が国際社会で活躍できるようにと、未来を思い描いた上で活動されているのが魅力的でした。また、文章を書く上で大切なことは、小手先のテクニックではなく、日々の出来事をどれだけ見ているか、どれだけ感じているかということだということがとても印象に残っています。海外インターンに限らず毎日感性のアンテナを立てて過ごしていきたいです。

 

おりばー@Tiger Mov

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